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国際・政治 社会保障

日本の少子化抑止策は子育て低所得世帯への手当が薄い 翁百合

低所得の子育て層の負担軽減へ、社会保障制度の見直しが求められている(政府の経済財政諮問会議で発言する岸田文雄首相、左から2人目)
低所得の子育て層の負担軽減へ、社会保障制度の見直しが求められている(政府の経済財政諮問会議で発言する岸田文雄首相、左から2人目)

 非正規雇用をはじめ低所得の子育て層の社会保険料負担などが重いことは国際比較の視点でも明らかである。少子化を抑止するためにも、負担と給付のバランスを見直すことが必要だ。

「給付つき税額控除」導入など制度設計の見直しを

 2022年の出生数が77万人にまで減少し、少子化が加速している。人口減少は日本社会や経済の将来にとって極めて深刻な問題であり、少子化を加速させないことは、日本が直面する最重要課題の一つといっても過言ではない。このためには、若者の所得を安定的に向上させて将来不安を軽減すること、社会保険制度を多様化した働き方に中立的に再設計することに加え、誰もが安心して子育てできる「共働き・共育て」社会実現に向けて働き方や性別役割分担に対する国民全体の意識改革を促すことなど、多角的な取り組みが必要だ。

 本年の政府の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」には、少子化対策として、児童手当の所得制限撤廃、出産費用の保険適用など、多岐にわたる子育て支援給付策を中心にさまざまな施策が盛り込まれた。予算規模は24年度からの3年間の集中取り組み期間で3兆円半ばとし、終了後はこども家庭庁予算を倍増することになった。しかし、具体的財源は年末に向けて先送りとなっており、今後これらの支援策や財源の検討がさらに進むと考えられる。本来は金銭的支援以外の少子化対策全般を論じるべきだが、本稿では、現状の税や社会保険料などの負担や手当が子育て世帯間で公正になっているかに着目して今回の対策を評価し、今後の課題を検討する。

子育て世帯へ支援薄く

 まず、日本の子育て世帯の給付(生活保護・児童手当等)と負担(税・社会保険料)の実態を国際比較分析により浮き彫りにする(詳細はNIRA総研ホームページ参照)。分析したデータはOECD(経済協力開発機構)の「Tax-Benefit Model」であるが、企業の被用者が主たる稼ぎ手の世帯が対象で、非正規社員、フリーランス、自営業者などが稼ぎ手の世帯は分析の対象外である。また、世帯で負担している消費税は考慮していない。これらの点に留意して分析結果を評価し、今後の政策の方向を考えたい。

 子どものいる世帯の負担率(負担〈所得税と住民税・社会保険料〉と給付〈手当等〉の差を世帯の総収入で除したもの)を、子どもがいない世帯と比較すると、日本には次のような特徴がある。それは、国際的にみると日本は子どもの有無による負担率の差が小さく、子どもがいる世帯への支援が薄いことである。特に、少子化対策との関係で指摘すべきは、生活保護の受給要件を超えている低所得層の子育て世帯の負担率が高いことだ。この傾向は、片働き、共働き、シングルマザー、シングルファーザーのいずれの世帯でもみられる。

 具体的に、さまざまな世帯類型のうち、共働き世帯の総年収と負担率の関係について、OECD平均と日本で比較したのが図1である。これをみると、日本の子どもの有無による負担率の差(黒と青の実線の幅)が、OECD平均の負担率の差(黒と青の点線の幅)よりかなり狭い。このことは、日本の子育て世帯全般に対する支援が薄いことを意味している。特に、日本では平均年収以下の子育て世帯の負担率(青の実線)がOECD平均(青の点線)よりもかなり高い位置にあり、負担率が高いことがわかる。

 図1の子ども有り世帯の負担率のOECD平均(青の点線)と日本(青の実線)を、税、社会保険料、各種手当に分解したのが、図2である。これをみると、第一に、OECD平均(左図)の低所得世帯の子育てに伴う費用負担を軽減しているのが、家族手当等であ…

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